「王になろうとした男」(伊東潤著)を読みました。織田信長の家臣や信長と関係する者を描いた短編集です。非常に面白く,また,いろいろと考えさせられました。
信長は部下を競わせて使うことで他の大名に大きな差をつけていきます。織田家では出自等にに関係なく成果を出せば出世するし,成果を出せなければその逆でときには死が待っているという厳しいものとの前提のもとで話は進みます。おそらく実際もそのとおりだったのでしょう。出自に関係なく出世した者の典型例は豊臣秀吉と明智光秀です。
特に印象に残るのは,些事に到るまで細やかに気配りできるものが出世していくくだりが多く登場することです。細やかな気配りができる者は,単に信長を気分良くさせるから出世するのでは無く,「こうした些細な気配りが,将来,戦場で指揮を執る際にどれだけ役に立つか,信長はよく知っていた。」(上記著書からの引用)からです。些事を疎かにする人が大事をきちんとできるはずもありません。
私のおつきあいのある経営者の方も,会社が非常にうまくいっている方は例外なく細やかな気配りのできる方ばかりで,感服させられまた大変勉強になります。また,私自身がこれまで雇ってきた弁護士や事務員も,細かい部分までしっかりと気の利く人はやはり優秀ですし,逆に,気配りができず相手の気持ちに立てない人は私をいらいらさせるばかりで仕事もできませんでした。
私自身,些事も大事にし,常に依頼人の気持ちに立って業務を遂行していきたいと常に考えていますし,事務所の全員にそのことを求めています。未だ,道半ばではありますが,これが完璧にできるようにならば事務所の繁栄はまちがいないと考えています。どのような仕事でも本質は変わらないと思います。
世の中には,大事なことさえきちんとすれば小事はどうでもいいなどと考えているように見受けられる人が多く居ますが「残念な人」と言わざるを得ません。そのような人に大事を託すことはできないですし,そもそもそのような考え違いをしている人に大事が達成できるとは思えません。