徒然草は昔から最も好きな古典の一つです。多少の欲も肯定する現世的な人間くささと,達観した思想の絶妙なバランスが心地よく,つい引き込まれて何度も読み返してしまいます。また,兼好法師と対話をしているかのような気持にさせられる文章も心地よいものです。今日のブログでは,私が好きな段,なるほどと思う段を3つ紹介いたします。
双六の上手(第百十段)
かなり有名な段です。双六の上手にその手立てを問うたところ「勝たむと打つべからず。負けじと打つべきなり。」と答えたという部分です。ビジネスでも,少々の負けや損は仕方ないですが,致命傷を負ってしまえばアウトであり再起は非常に困難になります。ビジネスでは,一か八からの一発勝負は避けるのが鉄則でしょう。何事も粘り強く,決して「死なない。」のが大事です。
友とするにわろきもの(第百十七段)
「よき友三つあり。一つは物くるる友,二つは医師,三つには知恵有る友。」と書かれています。なんか身も蓋もない話しのようですが,実際の人付き合いや商売を考えると「現実」であり,私もそのような自分であるように気を付けたいと思います。兼好法師が現代にいたら,弁護士も加えて,よき友四つありとするか,友とするにわろきものに分類するのか,興味があります。
ある大福長者の曰く(第二百十七段)
ある大富豪が富める者になるための心遣いを述べています。その一番目に来るのが,「この世がいつまでも続くと考えるべきであり,決して無常観に陥ってはいけない」というものです。それはまったくその通りであり,「人はどうせ死ぬんだから。」などと考えたら,努力して事業を発展させようなどという気にはとうていなれないでしょう。私も,そのような無常観を言い訳にしてチャレンジや努力を怠らないように十分気をつけたいと考えています。